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2015.07.12

言論弾圧の冤罪はこのようにして創られる。

以下は全て産経新聞からの転載である。


陳情者は言った。「悪いことをしなくても地獄に突き落とされる。この国では夜も安心して眠れない」


 「留置所から出てきたばかりです。是非お会いしたい」

 数年前にある集会で知り合った陳情者、徐崇陽氏から久しぶりに電話がかかってきた。その声は大きなノイズが交じっており聞きづらかった。

 北京に駐在する外国人記者の電話がすべて盗聴されていることは常識だ。一方、陳情者も当局から重点的にマークされる対象だ。盗聴されている電話同士で会話すると、こうしたノイズが発生するといわれる。

 「拘束された理由はなんですか」と聞いた。「警察にはめられました。悔しいです」と徐氏がいきなり涙声となった。その直後、電話が切れてしまった。

 盗聴していた当局者が「これ以上喋るな」という警告の意味を込めて、嫌がらせとして切ったとみられる。中国で取材するとき、よくあることだ。

 以前に行ったことがある北京の南郊外にある徐氏のアパートを訪ねた。6月上旬のある午後だった。

 ドアを開けてくれたのは徐氏本人だった。約1年ぶりに見たその姿に驚いた。やつれていて体全体が一回り小さくなった。顔から生気が消え、10才ぐらい老け込んだように見えた。右足を引きずっていて、顔や手の甲などに青いあざがあった。取り調べを受けたとき、警察官から暴行をうけたという。

 徐氏の話を約2時間聞いた。以前取材したとき、自分の主張を理路整然と話していた徐氏だが、話が途切れたり、前後が続かなかったり、突然泣き出したりする場面が多かった。留置所での過酷な体験が彼の精神を不安定な状態にしたようだ。

 これまでに多くの陳情者に取材してきた。土地を強制収用された農民や、家族が警察に殺害された労働者などは、ちゃんとした教育を受けたことのない人がほとんどだ。自分の事情をうまく説明できないし、法律も知らない。

 その中で、徐氏は異質な存在だった。父親は大学の学長を務めた元共産党幹部で、母親は画家だった。徐氏は解放軍の将校を経て、1990年代に湖北省で運輸会社を立ち上げ、親族のコネなどを利用して、瞬く間に事業を拡大させ、数年で複数のタクシー会社、レストランを経営する地元では有数の企業家となった。個人の資産総額は最大時、1億元(約21億円)を超えた。

 事業をさらに拡大させようとして、徐氏はある共産党指導者の親族が経営する企業と提携したことが転落のきっかけとなった。最後は相手に騙された形で、企業を乗っ取られ、ほぼ全財産を失った。

 北京にやってきて陳情者となったのは2003年ごろだった。警察と検察に門前払いされ続けても、財産を取り戻そうと執拗に陳情し続けた徐氏は2011年に、詐欺容疑で逮捕され、17カ月も投獄された。

 「知人との金銭トラブルを当局が拡大解釈して詐欺罪にした。陳情をやめさせようとしてでっちあげた冤罪だ」と主張する徐氏は出獄後、逮捕と起訴の手続きに不備があったとして、警察に損害賠償と謝罪を求める訴訟を起こした。

 中国で警察を訴える裁判は珍しいため、外国メディアからも注目された。産経新聞が徐氏を取材したのもその頃だった。ある日、裁判所から出てきた徐氏、支持者だと自称する十数人の男女に囲まれた。一緒に記念写真を撮ることになった。実はこの写真撮影は、警察側がしかけた罠だったという。前列中央に立つ徐氏に気付かれないように、後ろ列に立つ複数の人が密かに「香港のデモを支持する」と書かれた紙を掲げた。

筆者注  としないと日本語としてはおかしい。


 この写真などが証拠となり、徐氏は逮捕された。中国国内で香港のデモを支持する言動はすべて違法行為とされ、徐氏は主犯の一人にされた。

 警察当局が徐氏をはめた目的は、警察への訴えを取り下げさせることだった。8カ月収監されたあと、徐氏は警察の要求を受け入れて釈放された。「これからも陳情を続けるつもりだが、勝ち目はないだろう」と徐氏は寂しそうに言った。

 別れ際、「何も悪いことをしなくても地獄に突き落とされることがある。この国の金持ちも貧乏人も、夜は安心して眠れない。金があったとき、アメリカに移民すればよかった」ともらしたことが印象的だった。

(中国総局 矢板明夫)

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コメント

以下は全て渡部要次郎氏から配信されたメルマガからの写しである。

百田氏発言、朝日に批判の資格はあるか

             櫻井よしこ

健全な民主主義社会であり続けようとするなら、報道及び言論の自由を守
るのは当然だ。言論の自由こそ、国家の基本的価値として尊重されなけれ
ばならないと、私は信じている。
 
そのうえで、自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」(文芸懇)に講
師として招かれた百田尚樹氏の発言に対する批判と自民党の対応には疑問
を抱く。

メディアは百田発言と文芸懇に関して「沖縄・報道の自由、威圧」(朝日
新聞、6月27日)などと一斉に批判を浴びせ、自民党は文芸懇代表の木原
稔党青年局長を更迭し、1年間の役職停止を決めた。
 
問題となった百田氏の発言は一体、どのようになされたのか。氏による
と、若手政治家の勉強会に招かれ、冒頭でのカメラ撮りを除けばそのあと
は取材なしのオフレコだと説明されて、約1時間語ったという。

「メディアの人たちは全員外に出たんです。けれど部屋の仕切りの磨りガ
ラスに人の耳の形がくっきり見えていました。ガラスに耳をくっつけてい
るんだ。僕の地声は大きいし、マイクも使っているから丸聞こえやなぁと
思ったんですが、取材なしのオフレコやから、また、これを書いたらルー
ル違反ですと木原さんも言ってましたから、気にしないで喋ったんです」
(百田氏)
 
日本では、オフレコで語ったことでもしばしばリークされる。その意味
で、日本のジャーナリズムのオフレコルールは必ずしも当てにならない現
状がある。そうした中、氏は質疑応答で沖縄のメディアについて、「左翼
勢力に乗っとられている。先生ならどんな対策をとりますか」と問われ
た。質問した長尾敬衆院議員の話だ。

「平和活動の名の下に、反社会的活動が行われている事実が沖縄にはあり
ます。こうしたことをメディアは報道すべきだと、言いました。それはき
ちんと事実を報じてほしいということであり、何かを報じてはならないと
いう言論弾圧ではありません」

多様性が重要,百田氏が語った。

「質問に対して、僕も沖縄メディアで批判されていると言って、2つの新
聞は潰さなあかんけれども……とそこで言葉を濁したんです。落語家が語尾
を濁す形を意識して、断定表現を避けたんです。言論を弾圧しようなんて
全然、思っていません」
 
新聞社に「圧力をかけたらどうか」との問いもあった。氏が説明した。

「僕はこれは語るべきことではないと思い、それ(圧力をかけること)は
難しいと言って、すぐに話題を切り替えました。新聞よりもテレビの方が
影響力は大きいですから、テレビ局の体制を批判しました。地上波テレビ
局の電波使用権が半世紀以上も、いわば既得権になっているのは問題で
す。この独占事業分野に自由競争の原理を導入すべきだと、かなり熱を込
めて語りました。でも、この件はあまり報道されていません」
 
上智大学教授で、報道・表現の自由に詳しい田島泰彦氏はこう語る。

「メディア批判は自由にやってよいと思います。但し、それをどう表現す
るかが問われます。右寄りであれ左寄りであれ、新聞を潰すという発想は
妥当ではないと思います」
 
百田氏も「本気で潰さなあかん……」と言ったのではないと語る。メディア
への圧力についても氏は「難しい」と語り、話題を変えている。ただ、そ
の言葉だけをとれば、追及される脇の甘さはあった。
 
田島氏は、言論、表現、報道の分野では、もっと幅広く多様性を認めるこ
とが大事だと強調する。

「欧米のメディアは政治的スタンスがはっきりしています。スタンスが異
なるから、ない方がいいとまでは、彼らは言わない。異なる相手と議論す
ることで初めて、多様で多元的であることを前提にした、より健全な社会
が生まれます。

それは日本的な公正中立というものとも異ります。応酬し、批判し合うこ
とが大事です。日本に欠けているのはその点でしょう」
 
大事なことは、多様な物の見方と多角的な情報を提供する場を社会全体で
確保することだ。メディアはその最先端で、幅広い視点と全体像を示す多
様な情報を報じる責任がある。
 
百田氏らへの批判の先頭に立っている感のある「朝日新聞」は、そのよう
なメディアとしての機能を果たしているか。沖縄の2紙はどうか。
 
朝日の慰安婦報道における酷い偏りや、福島第一原発所長の吉田昌郎氏の
調書についての歪曲報道は、私たちの記憶に新しい。朝日が、慰安婦の強
制連行に関する吉田清治氏の嘘を32年間も放置した末に、関連記事を取り
消すと発表したとき、私は、朝日が反省し、世界に広まった自らの報道の
間違いを正すべきだと批判した。

バランスのとれた判断では朝日は真に反省したか。彼らは第三者委員会に
検証を任せ、「報告書」が昨年12月に発表された。委員には慰安婦問題の
専門家は誰ひとり選ばれておらず、従って、その内容が的外れなものに
なったのは当然だった。
 
専門家抜きに如何にして真の検証が可能だと、朝日は考えたのか。その答
えは、朝日の去年8月5日付の「慰安婦問題の本質、直視を」と題した杉浦
信之氏による1面の主張から見てとれると思う。氏は朝日批判を「いわれ
なき批判」だと逆に非難した。

十分な反省ができないのである。その結果、朝日は、言論・報道の自由と
表裏一体の、多様な物の見方と多角的な情報提供を拒絶し続けていると言
われても仕方がない。その朝日から多くの読者が離れている。廃刊などし
なくても、信頼に値する報道ができないとき、読者は離れていく。私はそ
れでよいと思う。
 
沖縄の2紙も同様だ。彼らは、メディアの重要な役割である多角的多層的
な情報を報じているか。そうではないだろう。現在審議されている平和安
全法制だけでなく、沖縄紙の偏向報道について、私はこれまで幾度か言及
してきたが、沖縄メディアの情報の偏りの中で、読者は如何にしてバラン
スのとれた判断を下せるのか、疑問に思わずにいられない。
 
沖縄には、2紙とは別の新しいメディアが必要だと私は考えている。もっ
とバランスのとれた情報を提供する必要があるのであり、2大紙の偏向し
た情報しか読めないとしたら、読者は本当に気の毒だ。
 
さて、自民党は烈しい批判に驚いたのか、党内の勉強会での発言が大問題
となり、安保法制を通すために木原氏の処分を急いだ。であれば、先に衆
議院の憲法審査会に長谷部恭男早大教授を招いた船田元氏の責任はどうな
のか。

船田氏は安保法制の議論を進め、憲法改正を実現すべき役職にありなが
ら、それに逆行する人選を行った。日本に、それがどれ程深刻な負の影響
を与えるか。そのことを考えれば、まず、船田氏の処分こそ考えるべき
だ。  『週刊新潮』 2015年7月9日号 日本ルネッサンス 第662回

                 (採録:松本市 久保田 康文)

投稿: 早島潮 | 2015.07.12 17:10

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