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2015.08.01

安保法案・ヒゲ隊長質疑詳報

安保改定質疑についてヒゲ隊長の説明を記録として留めておくことにした。以下は全て産経新聞からの転写である。


【安保法案・ヒゲ隊長質疑詳報(1)】

「プラカードより法案掲げろ!」


 集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案は28日、参院平和安全法制特別委員会で実質審議がスタートした。「ヒゲの隊長」として知られる自民党の佐藤正久元防衛政務官が質問のトップバッターとなり、元自衛官の経験を生かし法案の必要性について政府の答弁を引き出した。やりとりの詳細を紹介する。
          

 佐藤正久氏「日本を取り巻く環境が厳しくなったとの認識は、多くの政党が共有している。であれば、厳しくなった環境から、日本国民のリスクを下げるため自衛隊に動いてもらうことが必要だ。そのための法律を整備するのは政府だけの責任ではない。われわれ国会議員が国民の代表として、与野党関係なく、いかに国民のリスクを下げるか、そのために自衛隊にいかに動いてもらうかの法案を出すべきだ。プラカードを掲げるのではなく、法案を掲げてしっかり議論すべきだと思うが、首相の考えは」

 安倍晋三首相「国民の命と平和な暮らしを守り抜いていくことは政治家にとって最も大切な責務だ。本来、与党も野党もない。わが国を取り巻く安全保障環境はますます厳しさを増しており、情勢をしっかりと分析・評価し、国民の命と平和な暮らしと領土、領海、領空を守り抜くため、砂川判決の言う必要な自衛の措置とは何かをとことん考えぬいていく責任がある。衆院では維新の党が対案を提出し、議論がかみ合った。野党にも対案や独自案を提出していただき、安全保障に関する法律は、できる限り一致点を見いだす努力を重ねていくことが政治家に課せられた責務だ」


 佐藤氏「法律がなければ自衛隊は動けない。法律がなければ訓練もできない。法律ができたからといって、すぐ結果を出せるわけではない。自衛隊はスーパーマンではない。自衛隊にしっかり結果を出してもらうためリードタイムをとって法律を整備することも大事な仕事だ。隊員の訓練という観点から法案成立の必要性について答弁を求めたい」

 首相「自衛隊の活動では訓練も含めて法的根拠をあらかじめ明確にしておくことが必要だ。法的根拠を明確にすることで、平素より各国と連携した訓練や演習などを可能とすることができる。法的根拠を定めておくことは極めて重要だ。例えば日本近隣で武力攻撃が発生し、わが国への武力攻撃が発生したとは認定されないが、公海上で米艦がミサイル攻撃を受けた場合、日本の艦船が米艦船を守ることができるとなれば、日頃からそのような事態を想定して訓練や運用上の協力をすることができる」

 「しかし、日米間でも現場で相互協力を深め、訓練を重ね、十分な連携態勢をとることは一朝一夕にはできない。あらゆる事態に対処するための十分な準備を行うためにも、一日も早い平和安全法制の整備が不可欠だ。そのことで切れ目のない対応が可能となる」

 佐藤氏「安全保障環境がどれだけ厳しくなったか、われわれの認識と、国民の認識にギャップがある。どういうことが日本周辺や世界で起きているかについて議論を進めたい。まずロシアだ。ロシアは昨年、クリミア半島を併合した。力による現状変更といって過言ではない。ウクライナはクリミアを施政下においているが、ウクライナはNATOの一員か」

 岸田文雄外相「ウクライナはNATOには加盟していない」
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 佐藤氏「加盟していないので米国や英国、フランスの集団的自衛権の対象ではない。国連もロシアが常任理事国の1カ国だから実際に動くことはできなかった。結果的にロシアにクリミアを編入された。そして、ロシアがクリミア編入に動いているとき、中国はベトナム沖で石油探査を行っていた。掘削機の周りでは漁船や巡視船などが警備し、軍艦も出たという報道もあった。ベトナムが抗議しても力が違うのではね返される。相手が中国だから国連も動けなかった。ベトナムが助けてほしいといっても集団的自衛権の対象国がない。南シナ海での岩礁埋め立ても、このベトナム沖での石油掘削での(国際社会の)対応を見てから始まったという見方もある」

 「中国には『戦略辺境』という考え方がある。国力に応じて国境は変わるものだと。第2次世界大戦の後、西はチベットに武力侵攻し自治区にした。西北でウイグルを自治区にした。北で内蒙古も自治区にした。今度は海軍力がついたこともあってか、南シナ海、東シナ海にまた進出の動きがある。ベトナムからフランス軍がいなくなったら西沙諸島に武力侵攻して半分を占領した。米国がベトナムから撤退したら残りの西沙諸島の半分に侵攻した。ベトナムのカムラン湾からソ連がいなくなったら、ベトナムが領有していた南シナ海の6つの岩礁を占領し、フィリピンから米国がいなくなったら南沙諸島のミスチーフをとった。まさに力の空白に応じてどんどん侵攻していった。さらに中国は先の防衛白書で方針転換を表明した。陸軍重視から海軍重視、海軍を近海から遠洋を含む複合型へ、空軍を領空防護型から攻防兼務型に変えた。この動きをどう見るか」


 中谷元防衛相「中国は1950年代から70年代にかけ西沙諸島へ、80年代以降は南沙諸島へ、力の空白を突く形で南シナ海全域に進出してきている。近年は南沙諸島における急速かつ大規模な埋め立て活動を強行するなど、海洋進出をより活発化させている。こうした中国の軍事的動向の背景には、自国防衛のほか、領有権主張の強化、海洋権益の獲得、海上輸送路の保護などの目標があると考えられる。中国はより遠方の海空域における作戦遂行能力の構築に努めつつ、今後とも海洋活動のいっそうの拡大、活発化を進めていくと考える」

 佐藤氏「人ごとではない。中国は南シナ海の7つの岩礁を埋め立てているが、ファイアリークロス礁には3000メートル級の滑走路がみてとれる。ほとんど滑走路、誘導路が完成している。近くの別な岩礁も埋め立てし、すでに軍艦も寄港する動きがある。今後、中国が南シナ海に防空識別圈を設定する可能性も否定できない。南シナ海で中国の航空優勢・海上優勢が図られた場合、日本の安全保障にも大きな影響があるのではないか」

 中谷氏「中国は現在埋め立て中の地形について軍事利用を認めると公言しており、今後、港湾、滑走路、レーダーなどの軍事施設を建設していく可能性がある。軍事施設が建設された場合、一般論として言えば、海警や海軍、空軍のプレゼンスを増大させる可能性があり、南シナ海の安定的利用に対するリスクが増大しかねない。わが国への安全保障への影響は否定できない。『A2AD(接近拒否・接続拒否)』というが、マラッカ海峡などのチョークポイントを経由した米軍などの南シナ海への接近を阻止し、行動の自由を制限することで、中国の海空軍の南シナ海から西太平洋への進出を容易にする効果、つまり接続拒否が生じる可能性がある」

 佐藤氏「中国は防空識別区を公海上に設定している。入ってくる際は事前に通報せよ、通報がなければ軍事的措置も辞さないとして、あたかも領空のような主張をしている。今までは中国本土から遠いためレーダーが届かなかった。ところが、今回のガス田は防空識別圈の真ん中に、日中中間線を逆利用する形で、西側のほうに乱立している。軍事利用の可能性は」

 中谷氏「中国は海洋権益の獲得等を目的に東シナ海で海洋プラットホームの設置など、石油や天然ガスの採掘に関する活動を継続している。中国側がその軍事利用を表明しているわけではないが一般論で言えば、レーダー配備の可能性、ヘリパッドをヘリ等の展開のために利用する可能性が考えられる。政府としては警戒監視活動に万全を期し、今後の情報収集などに支障を来さない範囲で、公表できるものについては公表していく」

半島有事なら数十万人が日本へ避難」

 佐藤正久氏「尖閣諸島に一番近いヘリポートはガス田で、距離は300キロしかない。那覇までも360キロ、佐世保までも580キロしかない。非常に近いところに海洋基地がどんどんできている。この現実を人ごとではなく、自分のこととして考えないといけない。なぜ中国がどんどん南西諸島や沖縄にプレッシャーをかけているか。中国の艦隊は青島や寧波から太平洋に出る際、南西諸島が邪魔になる。南西諸島、台湾、フィリピンを結ぶ線が第一列島線だ。伊豆諸島、小笠原、マリアナ諸島を結ぶのが第二列島線だ。第一列島線の内側の南シナ海、東シナ海は米国の艦艇などを入れず、第一・第二列島線の間で迎え撃つ方針のもと、どんどん南西諸島にプレッシャーをかけながら、沖縄を抜けて太平洋での訓練、年々、増加している傾向がある」

 「一番怖いのは潜水艦だ。船の下で魚雷を爆発すれば船体がたわむ、その反動で船体は逆に折れて真っ二つになる。韓国の哨戒艦が潜水艇の魚雷一発で真っ二つにされ、46人が亡くなった。その潜水艦、水上艦艇、航空機が南西諸島やバシー海峡を抜け、どんどん活動を活発化させている。南シナ海を潜水艦の聖域とし、潜水艦からミサイルを発射する動きも出てきている」

 「尖閣諸島を行政区に持つ石垣市議会が7月14日、平和安全法制の今国会での成立を求める意見書を可決した。日本の最前線で、中国等の領海侵犯を受けている石垣市議会の意見だが、所見は」


 安倍晋三首相「残念ながら、南シナ海で中国は大規模な埋め立てを行っている。東シナ海ガス田の問題も、2008年の合意が守られていない。同時に尖閣の領海に公船が何回も侵入している状況の中で、石垣市の皆さんは最も日本の南西に位置している街なので、その地理的性質上、わが国の安全保障環境の変化を日々、肌で感じているのだろう。石垣市の意見を真摯(しんし)に受け止める必要がある。永田町では感じえない肌感覚の危機感を持っているのだろう」

 「こうした安全保障環境の大きな変化の中で、日本もわが国のみで自国を守りきることはできない。わが国独自に守っていく気持ちは必要だが、しっかりとした同盟関係を機能させることで抑止力を強化し戦争を防ぐ。力による現状変更は行うことはできないと相手方に理解させつつ、平和的な発展をお互いに進めていくことが重要ではないか。つまり平和的発展の道に方針を変更するよう促していくことも大切だ。そのためにもしっかりと備える。切れ目のない平和安全法制を整備する。日米同盟が揺るぎないものだと内外に示すことで、この海域も含めてわが国の平和と安全を守り抜いていくことができると確信している」

 「日米同盟はわが国の安全保障の基軸だ。駐留する米軍のプレゼンスは不測の事態に対する抑止力としても機能している。わが国の平和と安全を確保していくためには、平時、グレーゾーン、集団的自衛権に関するものも含め、あらゆる事態に切れ目なく日米が一層、協力して対応てきるようにしておく必要がある。平和安全法制が整備されれば平素から米艦などの防護を行うことが可能になり、自衛隊と米軍の連携した警戒態勢などの強化につながる」

 「重要影響事態では米軍により充実した支援を行うことが可能となる。存立危機事態では自衛隊と米軍の一層緊密な協力が可能となる。平素より幅広い種類の訓練や演習を実施できるようになる。さまざまな危機に対する日米の共同対処能力は飛躍的に向上する。日本が危険にさらされたときには、日米同盟は完全に機能するようになると言ってもいい。そのことを世界に発信することで紛争を未然に防止する力、すなわち抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」

 佐藤氏「朝鮮半島もこの数年で環境が変わった。朝鮮戦争はまだ終わっていない。終戦ではなく休戦だ。休戦状態のまま、正規兵だけで北朝鮮が約145万、韓国が約65万、にらみ合っている状態で、その間に国連軍が割って入っている状態だ。朝鮮戦争の国連軍の後方司令部は横田基地にあり、7つの在日米軍基地に後方基地としての機能があるため、国連旗が日米の国旗とともに立っている。これが現実だ。日本政府と朝鮮戦争の国連軍との地位協定がある。国連軍が立ち上がった場合に便宜を図る協定がある。朝鮮戦争の国連軍は何カ国で、どのような国々か」

 岸田文雄外相「朝鮮国連軍は1950年、朝鮮戦争勃発時に創設され、1953年、休戦協定発効後に逐次撤退を行ったが、現在でも朝鮮半島の平和と安全の保持のため、韓国に司令部を、日本に後方司令部を配置している。締約国は現在12カ国ある。わが国のほか、米国、豪州、英国、カナダ、フランス、イタリア、トルコ、ニュージーランド、フィリピン、タイ、南アフリカ。以上12カ国だ」
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 佐藤氏「国連軍がまた動く場合、地位協定に基づき日本政府も便宜を図らないといけないし、彼らも朝鮮半島に来る義務も責務もあると考える。そういう状態を考えながら今回の法整備を行わないといけない。今、韓国にはどれくらいの数の邦人がいるか」

 岸田氏「長期的に滞在している在留邦人は約3万7000人だと承知している。旅行者や出張者などの短期旅行者数は時期により変動はあるが、平均的には約1万9000人程度だ。合計すると5万6000人程度と見積もられる」

 佐藤氏「約5万6000人の邦人がいる。邦人以上にフィリピンやベトナムの人がいる。米国人もいる。何かあれば民間人を含め、第三国の人が避難する先は、ほとんどが日本だ。数十万人が日本のほうに来る。そういうことを前提に、邦人の安全を確保し、場合によっては国連軍と連携して対応することが求められることを理解しないといけない」

 「北朝鮮は日本を射程に入れる数百発の弾道ミサイルを保有している。ノドン、ムスダンといわれるが、1300キロの射程だと考えると韓国用ではなく日本用だとの見方がある。韓国用ならもっと射程の短いスカッドで十分だという話もある。昨年3月、北朝鮮は初めてノドンを西海岸から東海岸方面に発射した。今までは東海岸から東か、西海岸から南へ撃っていたものを、今度は西から東、自分の頭の上を飛ばした。間違いなく精度と自信が向上している。そういうミサイルを北朝鮮が持っている事実がある」
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「そのミサイルから日本人をいかに守るか。発射される前にそれをたたけばいいが、実際に日本を射程に入れるノドンは車載式だ。事前に車が動いて、ミサイルを立てて撃つので、発射前にたたくことはかなり難しい。山岳地帯もあれば、森林もある。日本国民を守るには撃たれてからたたくしかない。その場合に最も有効なのはイージス艦だといわれているが、日本の(ミサイル防衛システムを搭載した)イージス艦は現在4隻しかない。うち1、2隻は整備に入っているので、3隻ないとカバーできないときは、日米で連携する必要がある。さらに二重、三重の盾にするのが望ましい。当然の話だ」

 「まさに日本と米国が連携し、平時から有事まで互いに守り合う態勢をとることが抑止力につながる。たミサイルが日本に着弾する前、日本国民の命を守るためには、国際法上は集団的自衛権の行使と言わざるを得ない場合もある。平時からグレーゾーン、有事まで切れ目なく連携することが非常に大事で、それを可能にするのが今回の法制だ。ミサイル防衛について今回の法制にかける思いは」

 首相「政府が『必要な自衛のための措置の中に集団的自衛権は含まれない』という考え方を示した昭和47年、あの時代には北朝鮮は弾道ミサイルを保持しておらず、核開発も行っていなかった。ミサイル防衛では、北朝鮮がミサイルを発射すれば、海上ではイージス艦からミサイルを発射し、上空で撃ち落とすという仕組みになっている。米国の衛星からの情報をもとに、イージス艦がデータリンクをしながら落とす。日米共同で情報を収集・分析し、軌道を計算しながら対処できることになっている。その一角が崩されると、例えば米艦が攻撃を受けることにより、日本のミサイル防衛に穴が空いていくことにもなる。その米艦を守るのはわが国を守るための集団的自衛権に当たる。かつての解釈を行った40年前にはなかった状況が出現し、その必要性にもわれわれは直面している」

 「ミサイルに『ピストル』は非現実的…」


 佐藤正久氏「朝鮮半島有事の具体例で、邦人輸送、重要影響事態、存立危機事態の3パターンに分け、事態の進行ごとに、今まで何ができなかったのか、今回の法案で何ができるのか。議論したい。数十万の民間人を輸送する場合もある。日本だけでなく、いろんな国々が協力をして行う。民間の輸送力も軍事的な手段も使う。大変な輸送オペレーションになる」

 「まず平時だ。A国とB国で緊張が高まる。爆弾テロがB国でどんどん起きる。相互の非難が起き、緊張が高まっていく。邦人を含む民間人が日本に避難してくる。このときはまだ民間の輸送力が主体だ。そういう時、今回の法律ができることで何がやりやすくなるのか」

 中谷元防衛相「現行法では自衛隊の航空機、船舶、車両を用いて在外邦人などの輸送を行うことは可能だが、輸送に限られており、武器使用権限も自己保存型に限定されている。今回の法改正で在外邦人らの保護措置を新たに設け、任務遂行型の武器使用権限を付与する。これによって一定の場合には輸送だけでなく、警護や救出も可能となる」

 佐藤氏「次に重要影響事態だ。A国からB国への武力攻撃が切迫している。B国で何者かによる爆弾テロがさらに頻発する。一部、A国からB国に対し、休戦協定違反のような銃撃や砲撃がある。民間輸送もだんだん難しくなる。実際、私がイラクに派遣されたも、日本の航空会社は組合などの反対もあり使えなかった。そういうときに多くの国々が連携し、民間人を輸送するオペレーションが始まる。今回の法改正で何ができるようになるのか」

中谷氏「重要影響事態に関し、今般の周辺事態法改正では米軍以外の外国軍隊などにも後方支援活動が行うことができるようにしている。自衛隊が活動する地域をわが国領域などに限ってもいない。このため、例えば民間人を輸送する他国軍の艦艇などが重要影響事態に対処している場合には、公海上での補給などの支援が可能になる。改正後の自衛隊法第95条の要件を満たす場合には、自衛隊と連携して当該活動に従事している米軍などの部隊の武器などを、武力攻撃に至らない侵害から防護することも可能となる。在外邦人らの輸送や保護措置は要件を満たす場合、重要影響事態でも行うことが可能だ」

 佐藤氏「民間人を守るため国際社会が連携しているときに、お互い動きやすくなる。例えば、米国のヘリが邦人を乗せ、海上自衛隊の艦艇の甲板に降りる。その際、今までできなかった米国のヘリに対する給油や整備支援もできる。場所は戦闘が起きていない現場だ」

 「さらに事態が進み、存立危機事態となったとする。A国からB国への武力攻撃が発生し、わが国にとっても非常に影響がある場合だ。休戦協定は破棄され在韓米軍への攻撃も始まった。そういう場合での民間人の輸送は、軍用機や軍艦でないと難しい。法制で何ができるようになるか」

 中谷氏「存立危機事態が認定された場合は、例えば取り残された邦人を運んでいる米艦をはじめ、事態の拡大防止、早期収拾のため活動している米艦の防護などの措置も、新3要件に該当する場合には実施することが可能となる」

【安保法案・ヒゲ隊長質疑詳報(3)】

 佐藤正久氏「朝鮮半島有事の具体例で、邦人輸送、重要影響事態、存立危機事態の3パターンに分け、事態の進行ごとに、今まで何ができなかったのか、今回の法案で何ができるのか。議論したい。数十万の民間人を輸送する場合もある。日本だけでなく、いろんな国々が協力をして行う。民間の輸送力も軍事的な手段も使う。大変な輸送オペレーションになる」

 「まず平時だ。A国とB国で緊張が高まる。爆弾テロがB国でどんどん起きる。相互の非難が起き、緊張が高まっていく。邦人を含む民間人が日本に避難してくる。このときはまだ民間の輸送力が主体だ。そういう時、今回の法律ができることで何がやりやすくなるのか」

 中谷元防衛相「現行法では自衛隊の航空機、船舶、車両を用いて在外邦人などの輸送を行うことは可能だが、輸送に限られており、武器使用権限も自己保存型に限定されている。今回の法改正で在外邦人らの保護措置を新たに設け、任務遂行型の武器使用権限を付与する。これによって一定の場合には輸送だけでなく、警護や救出も可能となる」

 佐藤氏「次に重要影響事態だ。A国からB国への武力攻撃が切迫している。B国で何者かによる爆弾テロがさらに頻発する。一部、A国からB国に対し、休戦協定違反のような銃撃や砲撃がある。民間輸送もだんだん難しくなる。実際、私がイラクに派遣されたも、日本の航空会社は組合などの反対もあり使えなかった。そういうときに多くの国々が連携し、民間人を輸送するオペレーションが始まる。今回の法改正で何ができるようになるのか」

 中谷氏「重要影響事態に関し、今般の周辺事態法改正では米軍以外の外国軍隊などにも後方支援活動が行うことができるようにしている。自衛隊が活動する地域をわが国領域などに限ってもいない。このため、例えば民間人を輸送する他国軍の艦艇などが重要影響事態に対処している場合には、公海上での補給などの支援が可能になる。改正後の自衛隊法第95条の要件を満たす場合には、自衛隊と連携して当該活動に従事している米軍などの部隊の武器などを、武力攻撃に至らない侵害から防護することも可能となる。在外邦人らの輸送や保護措置は要件を満たす場合、重要影響事態でも行うことが可能だ」

 佐藤氏「民間人を守るため国際社会が連携しているときに、お互い動きやすくなる。例えば、米国のヘリが邦人を乗せ、海上自衛隊の艦艇の甲板に降りる。その際、今までできなかった米国のヘリに対する給油や整備支援もできる。場所は戦闘が起きていない現場だ」
 「さらに事態が進み、存立危機事態となったとする。A国からB国への武力攻撃が発生し、わが国にとっても非常に影響がある場合だ。休戦協定は破棄され在韓米軍への攻撃も始まった。そういう場合での民間人の輸送は、軍用機や軍艦でないと難しい。法制で何ができるようになるか」

 中谷氏「存立危機事態が認定された場合は、例えば取り残された邦人を運んでいる米艦をはじめ、事態の拡大防止、早期収拾のため活動している米艦の防護などの措置も、新3要件に該当する場合には実施することが可能となる

 佐藤氏「弾道ミサイル対処でも事例を議論したい。弾道ミサイルを警戒中の米軍の艦艇の防護で、平時、重要影響事態、存立危機事態と、何ができるようになったのか議論したい。まず平時だ。緊張状態が高まってくる段階ではどうか」

 中谷氏「今までは警戒監視の強化しかできなかった。平時で緊張感が高まっている状況では、弾道ミサイルへの警戒を含む情報収集、警戒監視活動を自衛隊が米軍と連携して行うということが想定される。今回の法改正により、米軍などからの要請を受け、防衛相が必要と認めた場合には、自衛隊と連携して当該活動に従事している米軍部隊の武器などを武力攻撃に至らない侵害から防護することや、平素における米軍への物品、役務の提供を実施することが可能となる。自衛隊と米軍などが連携した警戒監視態勢の強化につながり、状況に応じたより実効的な対応が可能となる」

 佐藤氏「重要影響事態。さらに緊張が高まったときはどうか」

 中谷氏「従来は米軍以外の他国軍への物品、役務の提供はできず、防護もできなかった。今回の周辺事態法の改正により、例えば弾道ミサイルの警戒監視等を行う他国軍の艦艇などが重要影響事態に対処しているといえる場合、公海上で補給などの支援を行うことが可能となる。要件を満たす場合には、平素から引き続き、自衛隊と連携して弾道ミサイル警戒を含む情報収集・警戒監視活動に従事している米軍を武力攻撃に至らない侵害から防護することも可能になる」

 佐藤氏「今までは米国のイージス艦に海上自衛隊が給油する場合、わざわざミサイル警戒を解き、日本の領海に戻ってもらわないとできなかった。これからはミサイル警戒を公海中で実施中のイージス艦に対し、海上自衛隊が公海上で給油できるようになる。さらに事態が進み、存立危機事態になったとき、何ができるようになるのか」

 中谷氏「現在は個別自衛権しか認められていない。状況が悪化して存立危機事態が認定される場合では、例えば弾道ミサイル警戒にあたっている米艦をはじめ、事態の拡大防止や早期収拾のために活動している米艦の防護などを、新3要件に該当する場合は実施することが可能となる」

 佐藤氏「今までできなかったことが可能になる。要は日本人の命を守るためだ。他方、このような朝鮮半島などの近隣有事で『集団的自衛権の行使は必要なく、周辺事態法に基づき、日本領海内での補給支援だけでいい』とか、『警察権に基づく権限で米艦防護をやればいい』という意見も一部にはある。しかし相手の武力攻撃に警察権で対応するのは、まさにミサイルにピストルで立ち向かうという感じだ。極めて非現実的な考えだと思うが、所見は」

 安倍晋三首相「わが国の近隣で武力紛争が発生し、米国も武力攻撃を受けている状況下で、警察活動として防護を行うことは、まさにピストルでミサイルに立ち向かうようなもので、現実的には実施困難だ。海上警備行動といった警察活動は、警察官職務執行法に基づく権限しか行使できない。あくまで犯罪など不法行為への対応を主目的とした仕組みだ。自衛隊員は十分な権限を与えられず、不法な武力攻撃に身をさらすことになり、隊員の生命を不必要なリスクにさらすことになる。それにもかかわらず日本人の命を守る目的を達成することは困難となる。合理性のある適切な対応とは考えられない。そもそも、米国が武力紛争の当事者となっている場合、米艦を防護するのは外形上、武力の行使と評価されるおそれがある」

 佐藤氏「次に、事態が乱立してわかりにくいという議論がある。重要影響事態、存立危機事態は、ともに日本への武力攻撃がまだ発生していないが、日本に影響がある事態という観点では同じだ。日本への影響度がより大きいものが存立危機事態だとの見方もできる。存立危機事態は重要影響事態に包含されるといわれるが、こういう理解でよいか」

 中谷氏「その通りだ。重要影響事態はわが国の平和および安全に重要な影響を及ぼす事態であり、存立危機事態はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態だ。存立危機事態は概念上は重要影響事態に包含される。存立危機事態は、重要影響事態との比較において、より重大かつ深刻な事態であるということは言うまでもない」

 佐藤氏「次に存立危機事態と武力攻撃事態等だ。武力攻撃事態等には、日本に対する武力攻撃の切迫度合いから『武力攻撃予測事態』『武力攻撃切迫事態』『武力攻撃事態』がある。存立危機事態と評価観点が違うが、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという根本では共通の概念だ。要は両方に該当する場合が多いと説明されているが、この考え方で間違いないか」

 中谷氏「武力攻撃事態は存立危機事態と異なる観点から評価される概念であり、ある状況において、それぞれの観点から評価した結果、いずれの事態にも該当することがあり得る。現実の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当する状況は、同時に武力攻撃事態等にも該当することが多いと考えられる。一方、存立危機事態に認定される場合が、同時にわが国に対する武力攻撃が予測、切迫していると認められないこともある」


 佐藤氏「まさに重なる場合が多い。(例外的に)はみでる一つの例が、ホルムズ海峡での機雷掃海という場合があり得るという理解でよいか」

 中谷氏「実際にどのような場合がありえるかは、事態の個別具体的な状況に即して全ての情報を総合的に判断し、客観的合理的に判断するものであり、一概に答えることはできない。しかし、あえて言えば、ホルムズ海峡で機雷が敷設される事例は、存立危機事態に該当しても武力攻撃事態等には該当しない場合として想定されるケースだ」

 佐藤氏「武力攻撃事態等は『予測事態』『切迫事態』『武力攻撃事態』に分かれている。一方で、存立危機事態は、予測事態と切迫事態の間で起こる『ケース1』と、切迫事態と行為発生の間で起きる『ケース2』の場合がある。ケース1,2はどういう場合が該当するか」

 中谷氏「現実の安全保障の環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は、同時に武力攻撃事態等にも該当する場合が多いと考えられ、一概に答えることは困難だ。しかし『ケース2』についてあえて言えば、わが国近隣で武力紛争が発生し、米国も武力攻撃を受けている。その時点では、まだわが国に対する武力攻撃は発生したとは認定されないが、攻撃国はわが国も射程にとらえる相当数の弾道ミサイルを保有しており、『東京を火の海にする』などの言動から、わが国にも武力攻撃の発生が差し迫っている状況にある。こうした場合は、わが国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると客観的に認められるような場合になっていることもありうる。同時に、弾道ミサイル発射の兆候がある中で、米艦が警戒にあたっており、米艦を防護しなければならない場合は、こうした状況を総合的に勘案して存立危機事態を認定する場合もありうる」
【安保法案・ヒゲ隊長質疑詳報(4)】

シーレーン防衛、逃げれば「臆病者」

 佐藤正久氏「ホルムズ海峡について議論したい。ホルムズ海峡を含めた日本のオイルシーレーン、日本の油の8割、天然ガスの約25%がペルシャ湾から日本に来ている。1日約60万トンの油が来なければ日本の工業製品も生活も維持できないといわれている。日本の油はペルシャ湾に依存しており、一番狭い部分がホルムズ海峡だ。日本関連船舶だけでも年間、4000隻が通っており、もっともホルムズ海峡を使っているのは日本だ」

 「イランは2012年にEU制裁に対抗してホルムズ海峡を機雷封鎖するという法案も提出した。仮にホルムズ海峡が封鎖されたら一番影響を受けるのは日本だといわれている。おそらく株価は大幅に下がり、物価にも深刻な影響が出て、冬場は灯油の高騰も予想される。備蓄は半年分だけで、液化天然ガスは備蓄も困難だ。備蓄を放出する動きがでれば株価はさらに暴落し、状況によっては経済や国民生活に深刻かつ死活的な影響が出ることも予想される。他方、日本の機雷掃海技術は世界トップクラスといわれている。湾岸戦争終了後のペルシャ湾での掃海実績の評価はどうだったか」

 中谷元防衛相「平成3年、防衛庁は機雷除去のために海上自衛隊の掃海艇をペルシャ湾に派遣した。同年6月5日から9月11日まで活動し、計34個の機雷を処分して10月に帰国した。海上自衛隊の活動はペルシャ湾の船舶航行の安全確保などに寄与することで、国際社会におけるわが国の平和的、人道的な貢献策の1つとして大きな意義があったもので、湾岸諸国や欧米諸国をはじめとする国際社会の高い評価を得たものだと承知している」

 佐藤氏「私がイラクに派遣されていた2004年4月、ペルシャ湾でタンカー『高鈴』が被弾した。日本関連の船舶だ。若干へこんだが乗組員は全員無事だった。守ってくれたのは米国だった。日本タンカーを守るため、結果として米海軍の若者2人とコーストガード1人が命を落とした。彼らにも奥さんや小さな子供がおられた。しかし、その時米国が日本に言ってくれた言葉は『同じ活動をやっている仲間を助けるのは当たり前だ』だった。海上自衛隊がインド洋で給油支援を行い、陸上自衛隊や航空自衛隊がイラク、クウェートで汗を流していたことを指して、そう言ってくれた」

 「残念ながら、今から8年前の選挙で衆参ねじれが発生し、法案の継続ができなくなり、海上自衛隊は一時、活動を中断して日本に帰ってきた。その途端、現場ではいろんなことを言われた。『なぜ米国の若者が日本の油を守るために命を落とさないといけないんだ』と。英国のフィナンシャル・タイムズには『これは武士道ではない。日本は臆病者だ』との一面広告もあった。当時、民主党の小沢一郎代表は、給油支援は憲法違反だとして法律延長を認めなかった。新たな法律を出し直し、衆院の3分の2の再可決を経て、再び海上自衛隊にインド洋で給油支援をやってもらった」

 「その際、私も横須賀に出港の見送りにいった。多くの政治家やマスコミ、ご父兄もいた。派遣される司令官は『憲法違反といわれたわれわれにも意地と誇りがある。日本国民の代表としてしっかり汗を流してくる』という趣旨の発言をした。与野党多くの議員がいた。その言葉に涙した議員も与野党関係なくいた。日本が一番ホルムズ海峡を使っている。世界トップクラスの掃海技術があるのに、本当に日本は、国際社会が共同して掃海しようとするとき何もしなくていいのか。私は日本も汗をかく必要があると思うが、所見は」

 岸田文雄外相「ホルムズ海峡はわが国のエネルギー安全保障上、たいへん重要な輸送経路だ。そのホルムズ海峡に関し、今回の法制の新3要件の第1要件が満たされる場合、つまり、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の一環としてホルムズ海峡に機雷が敷設され、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合であれば、当然、わが国はその事態に対処するため、あらゆる努力を行うことになる。機雷掃海は広い海域を各国が協力して実施するのが通例だ。湾岸戦争の際も各国が協力し、ピーク時で約30隻の掃海艇が約7カ月かけて掃海作業を行った。海上自衛隊は機雷処理の高い能力と実績を有しているので、そもそも、わが国の存立が脅かされる事態が生起している以上、わが国が各国と協力して機雷掃海にあたることは当然、考えられる」

 佐藤氏「日本も国際社会の一員だ。国際社会が共同で危機に対処しようというとき、できないことは無理だが、できるなら汗をかくのは当然だ。一方で、機雷掃海は危険も伴う。砲弾が落ちている状況では通常、機雷掃海は行わないが、停戦前であっても安全が確保されている状況なら掃海することはあろうかと思う。例えばイラン北部で散発的に戦闘が起きており、停戦前であっても、ホルムズ海峡には砲弾が飛んでこない状況なら、機雷掃海することは可能だと思うが、どうか」

 中谷氏「機雷掃海は非常に攻撃に脆弱(ぜいじゃく)で、戦闘が現に継続しているような現場では困難だ。また、実際に掃海活動が行われるか否かについては個別具体的な状況に即して判断する必要がある。そのうえで言えば、防衛省・自衛隊は現在、掃海艇27隻から構成される世界有数規模の掃海部隊を有している。平成3年に機雷の掃海を行ったが、浅瀬で流れの速い、非常に掃海が困難な、残された機雷を除去したということで、世界各国から技術的にも高い評価を得た。この後も平成23年からペルシャ湾で開催される多国間の掃海訓練に参加している。そもそも海上自衛隊の掃海部隊は、わが国への武力攻撃が発生している状況で敷設された機雷を除去するために整備しているものであり、敵から大きな損害を受けることなく作戦を遂行できる状態であれば掃海を実施することは可能だ」

 佐藤氏「ホルムズ海峡は日本にとっても非常に重要な海峡だ。共同で掃海する場合、新3要件に合致すれば、隊員の安全性にも留意しつつ機雷掃海できるようにしておくことが必要だと思うが、見解は」

 安倍晋三首相「例えばわが国周囲に機雷が敷設されれば物資の輸入がストップする。国民生活に死活的な影響が出ると考えられるわけだが、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合にも、これとかなり近い死活的な影響が及ぶことがありうる。その中において、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提として、例えば石油などのエネルギー源供給が滞ることにより単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こる。国民生活に死活的な影響、冬場などで石油ガスが途絶える状況が発生すれば、国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じる可能性を全く否定するわけにはいかない」

 「そうしたことを総合的に評価し、ホルムズ海峡での機雷敷設を契機として、状況によっては存立危機事態に該当することもありうる。新3要件に当てはまる場合もありうるということだ。その場合には自衛隊の安全性に十分留意しつつ、機雷掃海を行うことができるようにしておく必要がある。いずれにせよ掃海は事柄の性格上、戦闘行為が行われている海域そのもので行うのは困難だ。そういう点を十分に考慮しながら行っていくということになる」

 佐藤正久氏「今回の法案で自衛隊の活動領域や新たな任務が増える。自衛隊の任務でリスクを伴わないものはないが、リスクがあるからといって何もしなくていいということではない。国家・国民のリスクを下げるために自衛隊にリスクを負ってもらうなら、そのリスクを小さくすると同時に、そのリスクを負ってもらう自衛隊に名誉と処遇を与えるのも政治の責任だ。最高指揮官としての考えを」

 安倍晋三首相「自衛隊員の使命は国民の命と平和な暮らしを守ることであり、国民のリスクを下げることだ。そのためにこそ自衛隊員は自らリスクを負うことになる。このため自衛隊員の任務はこれまでも常にリスクを伴うものだ。わが国有事における任務は文字通り命がけのものとなる。隊員にとっては極限に近いリスクの中で国を守ることになる。災害派遣も警察や消防では手に負えなくなったから自衛隊員が出動するわけであり、危険をはらむものだ。平和安全法制の整備によって、新たに付与される任務にもこれまで同様、リスクがある。われわれはこのようなリスクについて深刻に受け止めており、あらゆる手段でリスク低減を図っている。今後も法制、教育訓練、実際の派遣に至るあらゆる面でリスク低減の取り組みを行う」

 「それでも自衛隊員のリスクは残る。しかし、それは国民の命と平和な暮らしを守るためであり、自衛隊員に負ってもらうリスクだ。彼らが高い士気と誇りをもって任務を遂行できるよう、安倍政権で新たに策定した防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画では、栄典や礼遇に関する施策を推進すると明記している。昨年は元統幕会議議長に対して瑞宝大綬章が授与されたところで、叙勲も適切な運用に努めているところだ。万が一、隊員が死亡した際の補償や賞じゅつ金などの制度も充実してきた」

 佐藤氏「自衛隊員はリスクはある程度あるのは承知の上だ。しかしリスクを負う以上、名誉にこだわる。生前叙勲の問題だが、実は自衛隊の幹部の主力となっている『B幹部』、部内からたたき上げで幹部になった方がいる。C幹部とB幹部、入隊時は同じだ。努力して幹部登用の試験を受け、早く幹部になった方がB幹部だ。ただ、B幹部の叙勲は実は2%しかいない。C幹部は95%だ。今回、多くのOBも現役自衛官も、B幹部を含め、名誉という部分についても国会で議論を深めてほしいという要望がある」

 中谷元・防衛相「自衛隊員は本当に意識が高く規律を厳正にしており、常に国を守る使命感のもとに訓練を積んでいる。部内を通じて幹部になった方は非常に意識の面で強固なものを持っているし、任務遂行上も大変、貢献している。こういったB級幹部の処遇も、これからも心がけて取り組みたい」

 佐藤氏「隊員の賞じゅつ金の話をしたい。私が派遣されたゴラン高原のときは6000万円、イラクの場合は9000万円というように、金額が異なる。今派遣されている南スーダンは6000万円だ。一方で、消防隊員が殉職された場合は9000万円だ。公のために犠牲になった場合、公務での死亡という場合に、危険度において違うのは分かるが、イラクの場合は9000万円で、南スーダンの場合は6000万円というのはどうか。消防と同じくらいのレベルに上げるべきではないか」

 中谷氏「賞じゅつ金については、地方公務員である消防官や警察官の最高授与学が、国からのほか、都道府県、市町村の賞じゅつ金が授与され、最高授与額が9000万円になる例があると承知している。自衛隊員の賞じゅつ金の最高授与額は原則として6000万円であり、個々の職務の困難性、危険性などを踏まえ、海賊対処行動および原子力災害派遣については最高授与額を9000万円に増額する措置を行った。今後も自衛隊員に対しては、任務にふさわしい名誉と処遇が与えられるよう、不断に検討していきたい」

 佐藤氏「後方支援について議論したい。現行の『非戦闘地域』は武力行使との一体化を避けるため作った法律上の整理の概念だ。まさに活動開始から終了までの間、戦闘が起きないといわれる場所が非戦闘地域であり、そういう中から、実際に自衛隊が活動する実施区域を設定するのが従来の考え方だ。非戦闘地域という概念は現場の感覚から言っても分かりにくい。最初から最後まで、活動期間を通じて戦闘が起きないというのは、派遣前には政治家も現場指揮官も分からない。今回、新たな法的整理では、『現に戦闘が起きている現場』では行わず、それ以外の地域から選ぶ。今回は法的整理をしただけだ。大事なことは、どこで自衛隊が何をするかだ。どこを実施区域に選ぶかが、自衛官のリスクを議論するときの根本だ。活動の円滑さや任務遂行の容易性、安全性を考えながら実施区域を選ぶと言っている。もう一度、説明を」

首相「今までの非戦闘地域という区分の仕方は、武力行使と一体化しないという憲法の要請による概念だ。イラクのサマーワでも非戦闘地域という指定をした。半年間にわたり、自衛隊がいる間は戦闘が行われない地域だという考え方だったが、実は、その期間でも実際に危険なところもあれば、ずっとそうでないところもある。つまり『現に戦闘が行われていない現場』、例えば2週間、自衛隊がそこで活動するなら、そこは2週間は戦闘現場にならないという判断をする方がより現実的だという整理をしたところだ」

 佐藤氏「例えばイラクで航空自衛隊が輸送支援をした。Aというクウェートの空港からBというイラクの空港までは空自が運ぶ。そこから先は米国が自分の兵站部隊でC、D、Eという地域に運ぶ。一般論から言って、それぞれの部隊の責任地域が重なることはない。指揮統制の問題があるので責任区域を明確に区切る。あるポイントから自分の現場までは自分の部隊が運ぶ。これは自衛隊が日本有事の作戦で行う場合も同じだ。『兵站だから危ない』というのはあまりにも乱暴な議論だ。実施区域をどこに設定するかが大事なポイントで、実施区域を戦闘が行われる現場のすぐ近くで行うように言うのは乱暴だ。実施区域の設定の考え方について答弁を」

 中谷氏「実施区域は防衛大臣が円滑かつ安全に活動しうる場所を指定するとなっている。実際、自衛隊が活動を実施する区域の指定にあたっては、今現在、戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を指定するということであり、攻撃を受けない安全な場所で活動を行うことについては、いわゆる非戦闘地域等の概念を設けていた従来と変更はないが、どこが違うかというと、常にその場所を確認して安全な区域であるかどうかを判断して区域を指定するというところで、より厳密に安全に対する配慮がされるというところだ」

 佐藤氏「日本が米国の戦争に巻き込まれるという誤解がある。しかし、日米防衛協力の指針(ガイドライン)には、日米の合意事項として、新3要件に基づき集団的自衛権を行使する際にはこういう条件で、国際協力のときは日本が主権国として主体的に判断するなどと、厳密に明記されている。多くの国民は知らないかもしれないが、今回の集団的自衛権も限定的なものしか行わず、米国まで行って米国を守ることはしないと日米で合意している。日本は米国の戦争に巻き込まれることはないと明言してほしい」

 首相「ガイドラインには、日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだと書き込んである。これは日米共通の認識だ。また、政府の判断に加え、実際に武力行使を行うため自衛隊に防衛出動を命じる際は国会の承認を求めることになる。また、国際平和支援法においても自衛隊派遣にあたっては、わが国として法律で定められた要件や手続きに従い、国益に照らして主体的に判断するし、例外なき国会の事前承認が必要だ。法制の成立後も行政府と立法府が法に基づいて主体的に判断を行うため、米国の戦争に巻き込まれることは決してない。国会が例外なき関与をしていくということで、主体性が完全に確立されているということは申し上げておきたい」
=(完)

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